槍ヶ岳 北鎌尾根~焼岳縦走 序章
アルパインクライマーだったら誰もが耳にしたことがあるクラシックルートだ。
松濤明が壮絶な死をとげた場所、
そして加藤文太郎も遭難死した場所として有名である。
そんなドラマがある北鎌尾根は誰でも一度は登ってみたくなるだろう。
自分もそうだった。
その願いは2007年の10月に達成された。
数々のドラマの舞台は積雪期であるが、とりあえず自分は無雪期。
それでもパートナーと共に北鎌尾根から槍ヶ岳山頂を踏んだときの感動は、
今でも忘れられない。

独標から見た北鎌尾根。
ここなら単独で行けると思ったのだ。
今度は一人で登ってみたい。
自分の力だけで登りたい。
同レベルの人と一緒に行っても、
自分の力だけで登ったことにはならない。
無雪期の北鎌尾根単独行は普通のアルパインクライマーなら普通にできること。
が、自分はアルパインクライマーと言えるほど技術はないし、経験も少ない。
おまけに非力だし、ものすごい寒がり。
それでも挑戦してみたいと思い、こっそりと計画を練って行った。
まずは時期。土日などの休日ではなく、まだ暖かい9月初旬の、人がいない平日を選んだ。北鎌は人気ルートなので土日は必ず人が入る。人が入るということは、自分の前を行くパーティがいるかもしれない。先行パーティの後にくっついてルートファインディングをまかせっきりにして登るなんてとんでもない。自分の力で登ったことにはならない。
人のいない山に単独で入るには大きなリスクを伴うと言われる。たとえば、滑落した場合、パーティならパーティ内でレスキューすることも可能だし、遭難救助要請も出してもらえる。単独でも人が近くにいる場合は、滑落現場を目撃されて救助要請を出してもらえる場合もある。単独で人のいない山に入る場合は、これらの恩恵を一切受けられない。
それでも、あえて人のいない北鎌に入ることを選んだ。
自分だけの力で登ることにこだわりたかった。
たとえそれが原因で命を落とすことになったとしても。
時期の次は装備。
自分の弱点は重さと寒さ。
これが装備を決める重要な柱となった。
まずザックは、自体重の4分の1を超えない重さとした。それ以上だと、非力な自分はいくつかある核心部を乗り越えられない。と言っても、体重が少ないので、その重さは10.5kgとなる。自分的にはここまで切り詰めるのはけっこうきつい。
なぜなら寒がりなのでシュラフはもちろんダウンジャケットも必要だし、ツェルトではなくシェルター以上の装備も必要なのだ。小屋泊まりで軽量化するという方法もなきにしもあらずだが、できたら北鎌尾根から焼岳まで縦走しようと考えていたので、貧乏な自分は2泊以上の小屋代をひねり出すことはできなかった。
最終的には、シュラフ、シェルター、3日分の食事(朝夜各3回分で6食)、2日分の行動食、火器、申し訳程度の長さの細いロープなどをザックにつめた。重さはデジカメ・ヘルメット・1日目の行動食・飲料水を抜いて7.1kg。北鎌尾根に取りつくときは、1日目の行動食はなくなっているはずなので、飲料水3kgを入れても、ザックの最大重量はぎりぎり10.5kgを切るくらいだろう。
こうしてすべての準備が整った。
そして、夜行バスに乗って、上高地へと向かって行ったのだった。
「槍ヶ岳 北鎌尾根~焼岳縦走 1日目(1) 上高地~水俣乗越」 へ続く。
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COMMENT

はは。そのうちヨシさんも登場しますよ。
ところでエリア88の世界なんですね。
今度お話詳しく聞かせてください。

えーと。
もったいぶっているので早くは書けません(笑
うそです。
ほんとは早く書きたいのですが、時間がなくて。
このエントリも時間の合間合間に書いたものなんです。
以前の上越の春山?でもそうでしたが(橋が落ちるからって)、てるさんの軽量化はお見事!
初心者アルピニストコースと言いながら、単独・テントとハードルを上げるのは、お金がないからじゃなくて、
次ぎの目的への布石かなあ・・なんてね。
じっくり、様子をレポくださいませ♪
自分も重い荷物を背負うのが苦手だけど、寒さに強い人だと軽量化も少しやりやすいだろうにな・・・といつも思ってます。私もかなり寒がり。寒いとお腹壊れます(苦笑)
(北鎌のレポなんか必要もないのにけっこう読んでます。笑)
>自分だけの力で登ることにこだわりたかった。
>たとえそれが原因で命を落とすことになったとしても。
以前、「私は絶対死なない。」って言ってなかったけ?
でも、それだけ輝ちゃんにとって魅力的なコースなんだね。
続きも楽しみにしています。
かっちょいー
そんなちっこい体でよく成し遂げたね。
師匠がほめとったよん
今度またBB弾打たせてもらえるでー(笑

お金かければもっともっと軽量化できるんですけどねー。
ダウンやかっぱなんてかなり重いの使ってるんで。
でも、普通に担げれば軽量化なんてしませんよ。
北鎌上で酒飲んでおいしいもの食べたかったです。

そう、寒がりっていうのが一番のポイントです。
けっこうシュラフカバー+ツェルトだけって方もいるのに、
私はその装備だったら確実に凍死しますので(笑
これでも少しは寒さに強くなったんだけど(当社比)、
普通の人に比べたら全然だめですね。

そっか、北鎌レポ読んでるんだー。
それであんなに詳しかったんだ。
えと、白状しますと、「死なない」っていうのは周りの人を安心させるために言ってることです。
単独バリエーションに出かけるときは、いつでも今度こそ死ぬかもって思ってます。
とくに最近は全然アルパインルート行ってなかったし、
フリーも沢も行ってなかったので、今回はかなりドキドキでした。
って、自分のトレーニング不足なのがいけないんですけどね。

BB弾また撃ちたい!
あと刀でもまた遊びたい!
鎧はないの?
さすがだなぁ、輝ちゃん。
わたしには無理だけど、憧れちゃうよなぁ。。
軽量化、さすがですねー。

北鎌憧れるのは山ヤのサガですよね。
軽量化は寒がりでなく、金持ちであればもっと軽くできます。
あー、もっと金稼いで耐寒訓練しないと(笑
お願いします。

続き、もうちょっと待ってね。
ようやく全体のルート図ができたので、今度は北鎌のみの図を作らなきゃ。
めんどくさ…(笑
でも、地図を乗っけるのは私の主義。
読む人がわざわざ地図を引っ張り出して調べなくてもいいように
ぱっと読んだだけでルートがわかるようにしたいの。
てる (08/25)
mima (08/24)
てる (12/24)
KMD (12/24)
てる (11/25)