谷川連峰 仙ノ倉北尾根~谷川岳縦走 2日目
夜に気温が下がったおかげで雪はすっかりしまっていて、足は数cm沈むくらい。それも高度を上げるうちに沈まなくなっていった。しばらくこのルートに入ってるパーティはいないようで、トレースはまったくなかった。
歩いて行くうちに小屋場の頭をテン場にしたことが正解だったことが判明した。
快適なテン場を作れそうなところはなかったから。
小屋場の頭からは1,627m付近が非常に悪そうに見えたが、近寄ってみると、それほどでもなかった。でも、まあ、シッケイの頭を越えるまでが嫌かなと言ったところ。雪庇もあったし、隠れたシュルントもあったし。

小屋場の頭から仙ノ倉山頂までのルート。クリックすると拡大。
シッケイの頭を越えるとあとはひたすら歩いていくわけだが、仙ノ倉は風が強いと有名なだけあって、山頂直下はエビのしっぽ畑。山頂の標識とかにエビのしっぽがくっついているのは見たことあるが、雪面一面がエビのしっぽというのははじめて見た。
ここらへんが一日目のエントリに書いた、某中高年山岳会の2名の方の遺体が発見された場所。相当風が強いところなので、ビバークはかなり辛いものだったに違いない。ご冥福をお祈りいたします。
このえびのしっぽ畑の広がった単調な登りをクリアーすると、
谷川連峰の最高峰、そして唯一の2,000m峰である仙ノ倉山山頂に着いた。

仙ノ倉山 (2,026.2m) に到達。
母さん、オレはやったぜ…

あ、しまった、母さんにはオレはハイカーで通してるんだった。
こんなとこ1人で来てるなんて知られたら、それこそ卒倒しちゃうよ。
まあ、母さんのことはおいといて。
何がうれしいかって。
自分にとっては未踏のルートであること。
ソロで登ったこと。
踏跡がなく、一人でルートを切り開いたこと。
そのように苦労して登ったルートがバリエーションルートであること。
自分にしてはよくやった、というかんじ。
奇跡的に仙ノ倉山の山頂は無風だった。
しかも快晴。
自分への最高のご褒美だ。
ここでしばらく悩んだ。
エスケープルートとして平標山からの下山を届けてあるのだが、
そこから下りようかと思って。
なぜなら前夜、寒い寒い夜を過ごしたので、さっさと下山して、越後湯沢でぐるめ三昧し、あったかい蒲団のある家に帰りたかったから。それにこの場所から見えるエビス大黒ノ頭は、どうみても悪そうなかんじ。北尾根を登れたんだから、もうこれ以上危険なことはしなくてもいいだろ、みたいな。

エビス大黒ノ頭の位置。クリックして拡大。
でも、天気予報では、翌日も全国的に晴れだということ。こんな絶好のチャンス、何年もないことだろう。っていうか、もう一生ないかも。歳をとってこの山行を思い返したとき、あのときなんで行かなかったのかと後悔するかも。
そして、なによりも仙ノ倉北尾根を登ったことによって、
アドレナリンが出まくっていた。
それで、当初の計画どおり、谷川岳まで縦走することにしたのだった。
寒い眠れない夜を再び過ごすことはわかっていたけれども…

仙ノ倉から谷川岳までのルート。
Google Mapでもどうぞ。
大きな地図で見る
地図の見方:
まずふきだしはうざいので、ふきだし内右上の×(バツ)をクリックして消してください。左上の - (マイナス) をクリックして行くと地図が広域図になって、県のどこらへんに仙ノ倉山があるかわかります。逆に + (プラス) をクリックして行くと等高線の入った詳細地図になります。
それまで無風だったのに、エビス大黒避難小屋あたりで風が出てきた。時間が早いので通過。小屋の戸の前に雪は積もっていなかったので、中に入れそうなかんじだった。
で、仙ノ倉から見えた悪そうなエビス大黒ノ頭。やっぱりいやだった。ビビるほどではなかったけど、一般道でも雪がつくといやだなーと。
その後もけっこういやーなところを通過し、ようやく越路避難小屋が見えてきた。ここまでくると風もかなり強くなってきていた。

エビス大黒ノ頭・避難小屋の位置。クリックして拡大。
風だけでなく、雲も出てきたので、本日の行動はもうやめることにしよう。避難小屋の中にシェルターを張ればきっと前夜よりは暖かく眠れるはず。そう思って近付いていったら。
幸い、掘り出せないような深さではないので、スコップで堀りにかかった。が、よく見ると、扉が数センチあいていて、そこから雪が中に入り込んで凍っていて、扉があかないようになっていた。
なにしろこの時点ではけっこう風が強くなってきて、風で体力がどんどん奪われていくのがわかるくらいだったから。軽量化のため行動食も少なめだったし。
小屋に入って風をよけられると思ってたのに。次の大障子避難小屋まではあと2時間ほど歩かなければならない。ちょっと雲が出てきたのが心配だが、行くしかない。
越路避難小屋を後にし、風に耐えながら数十メートルほど歩くと、目の前に雪庇が。これに雪洞を掘れないか。風も強いし、雲もだいぶ多くなってきているから、次の避難小屋に行くよりは、ここでビバークするのが安全だろう。と、目の前の雪庇を堀りにかかった。
が、前日の雪庇と違って、20cmほど掘ると氷につきあたり、スコップの刃が立たない。しょうがないので、雪庇の一部を壁にして、雪のブロックを積んでシェルターを囲むようにした。前日より標高が高いので、さらに寒いかもしれないが。

雪庇を壁の一辺にしてシェルターを雪のブロックで囲んだ。
とりあえず完璧ではないけど風を避けられる住処を作ったので一安心。避難小屋になんて泊ろうという甘い考えがいけなかった。もともとシェルター1枚で縦走する予定だったんだから。人間、なにかに頼ろうとすると、気が弱くなっていけない。
質素な夕食をすませ、夜中になると気温が下がるので、明るいうちに寝ておこうと、まだ日も沈まないうちにシュラフに入った。一度18:00頃にシェルターの外をのぞいてみたら、あたり一面ホワイトアウト。ちょっと焦った。
晴れの天気予報が外れて、翌日曇りでガスったらどうしよう。ホワイトアウトナビゲーションは自信がないので停滞するしかない。ガスは節約していたのでまだあるが、超軽量化のため食糧はぎりぎり。停滞は1日しかできない。
その後、もし天気が崩れたら。携帯も通じないし、たとえ通じたとしても天候が悪かったらヘリも近づけない。いや、でも救助を呼ぶなんて、山ヤの恥。呼んだことあるけど(爆
と、心配することは山ほどあったのだが、とりあえず現在することは気温が低くなる前に睡眠をとり、少しでも体力を回復させること。気持ちを切り換えてさっさと寝の体制に入った。
前日の教訓から、マット(サーマレストのリッジレスト レギュラー)の下にはあらかじめスパッツを敷き、今度はゴアテックスのオーバージャケットを着てからシュラフに入った。
本当はダウンシュラフと体の間にはゴア製品は入れない方が暖かいという話なのだが。でも、前日はシュラフの上からオーバージャケットを着たらずれてしまっていまいちだったので、やむをえずジャケットを着てからシュラフに入ったのだった。
まあ、寒いことは寒く、あいかわらず寒さに震えて眠れなかったが、前夜に比べると寒くはなかった。標高は高くなっているのに。ゴアがシュラフの温かさを遮断するというのは嘘か? まあ、細かいことはどうでもいいや。とりあえず昨日より寒くなかったから。
「谷川連峰 仙ノ倉北尾根~谷川岳縦走 3日目」 へ続く。
関連エントリ






関連商品
![]() | ARAI TENT(アライテント) ビビィーシェルター 370930 商品詳細を見る |
![]() | BlackDiamond(ブラックダイヤモンド) トランスファー7 商品詳細を見る |
![]() THERMAREST(サーマレスト) リッジレスト(レギュラー) グリーンXグレー(底面) 30031 | 商品詳細を見る |
COMMENT
エビス大黒への登り道 雪は付いていなかったのでしょうか? アッサリと書かれていますが。
私の町から谷川連峰が見えます。(大障子の頭は見えませんが)あそこを輝子さんがこの時期ソロで縦走したのかと驚いています。
そこは、踏み込んではいけない世界のような感じでした。だから、よく行くなと思うのです。
機会があれば行ってみたいものです。厳冬期ではなく春山で。ひとりではなく。

エビス大黒への登り道は雪がついていたと思います。
反対に雪がついてない方が怖いです。
> 私の町から谷川連峰が見えます。
いいところにお住まいなんですね。

このコースの縦走は若葉さんだったら大丈夫だと思いますよ。
私よりもずっとずっと経験ありますよね?
今回、私は軽装だったのでちょっと怖かったけど、
装備がもっとしっかりしてれば3日ぐらい停滞してもOKでしょう。
でも、そんな天気が悪いときは入ってかないけど。
時間の無駄だから(笑
厳冬期は私もいやですね~。
寒がりだから(笑
重装備担げるくらいの体があるなら別ですが。
春山で満足することにいたします。
春山でも寒いけど(笑
てる (08/25)
mima (08/24)
てる (12/24)
KMD (12/24)
てる (11/25)