翌朝。シェルターの壁に雨がポツポツあたる音で目覚めた。外はすっかり明るくなっていた。シェルターを濡らすのがいやなので、早々に撤収開始。炊事場の屋根の下に荷物を運びこんで雨を避けた。
最後に残った袋飯を食べてから、上高地のホテルの日帰り湯へ行った。宿泊客もまったくいなくて貸し切り状態。5日ぶりの風呂を楽しんだ。軽量化のため下山後の着替えはパンツしか持ってきてなかったので、誰もいないのをいいことに、着ていたシャツを洗濯してドライヤーを2つ使って乾かした。(よい子の登山者の皆さんは真似しないように)
その後は自分にご褒美ってことで、お約束の上高地コロッケを食べた。

上高地コロッケ。このコロッケを食べるたびに無事でよかったと思う。
それからこちらもご褒美。歩いていたら下の看板が目について、即購入。

この看板が目に入って…

ケーキセットやソフトクリームじゃなくてここの弁当の部分ね。
山賊弁当とは、信州松本名物の 「山賊焼き」 が入った弁当のことだそうだ。「山賊焼きってなんぞや」 って方は下のサムネイルをクリック。弁当の説明が表示されます。上高地には何年も通っているけど、この山賊焼きの存在は今回はじめて知った。

クリックすると 「山賊焼き」 の説明が表示。
上高地インフォメーションセンターに移動して、この山賊弁当を食した。

こんなパッケージ。たしかに、でかいずら(笑

ご飯一段、おかず一段で880円はかなりお得だと思う。
たぶん、普通の女性の方には多いくらいではないだろうか。自分はご飯がもうちょっとあってもいいかと思ったけど。 お味の方もうまかったずら(笑
雨は小ぶりだがずっと降っていた。昨日、西穂山荘に泊っていたら、雨のせいでモチベーションダウンし、おそらく焼岳まで縦走せずに直接上高地に降りてしまっていただろう。昨日のうちに焼岳まで縦走しておいて本当によかった。
雨なワケなんで、バスの時間までヒマつぶしに上高地を観光するのもたるくて、天気が悪くて平日のためガラすきのインフォメーションセンターで、ベンチの上にマットを広げて横たわり、マジでグーグー寝ていた。たぶん、近くを通りかかった親子の会話はこんなかんじだっただろう。「おかーさん、あのオバチャン、口からよだれがたれてるよー」「いけません、見ちゃ。さっさと行きましょう」
………。
最後がどうもしまらないなあ。
じゃ、しめにひとつ、まじめに北鎌までの道のりを書いてみるとしますか。
まあ、上のように北鎌~焼岳縦走を終えて無事に上高地に下山できたわけですが、じつは北鎌に出発するまでが本当に辛かったんです。
このblogの説明に、「アルパインクライミングとぐるめのblog」 なんて書いてますが、
カテゴリ [攀]、そして
[登] の過去の記録を読んでいただければおわかりだと思いますが、自分はアルパインクライマーだと胸を張って言えるレベルではまったくありません。ハイカーに2~3本、毛が生えたようなものです。
そんなレベルなのに単独で北鎌に行きたいなんて身のほど知らずなことを考え、さらにアホなことに、トレーニングを怠っていました。この年は無雪期のバリエーションルートにまったく行ってなかったし、岩も全然練習していませんでした。だから無傷で北鎌を越える自信はまったくありませんでした。
なもんで、出発するまでものすごい葛藤がありました。こんな状態で行ったら絶対死ぬよ?ってかんじで。さらに、8月に北鎌で2名の方が亡くなる事故があって、ものすごいダメージを受けました。そんな意気消沈していたところに、何人もの方に単独では行くなと止められ、キズ口に塩と唐辛子を塗りこまれるような思いをしました。
それでも行きたかったんでしょうか。日程を9月のはじめの週に決めました。しかし、バスの予約をしようとしてためらい、番号を押したのに電話を切ることも何度もありました(ダイヤル回して手を止めた~♪ってかんじです。古っ)。この週は天気が悪いから無理、とか何かと理由をつけて先延ばしにしていました。でも、先延ばしにすることによってどんどんストレスがたまっていきました。
北鎌から帰った直後に書いたエントリのコメントにも書きましたが、なんでこんな思いをして行かなければいけないんだろう、いっそのこと行かないって決めてしまえばどんなにラクかと思ったりもしました。別に諦めても誰に対して迷惑がかかるわけじゃない、自分だけの問題なんだから。
でも、結局行くことを選んでしまいました。独りで。人とは既に行ったことがあるので、この夏、誰かと一緒に、たとえ自分よりレベルの低い人と一緒に北鎌を越えたとしても、自分の中ではまったく意味のない山行になってしまうからです。
そして、行くことを選んだのは、自分に負けるのが嫌だったから。人に負けるのは、基準がそれぞれ違うので、どうだっていいことなんですが、自分にだけは負けたくなかったんです。生きて帰ってこれないかもしれないけど、北鎌に取りつくだけはしたいと思いました。
銀河鉄道999で、宇宙海賊キャンプテン・ハーロックが言うこんな名言があります。

男なら、危険をかえりみず、
死ぬと分かっていても戦わなくてはならない時がある。
負けると分かっていても戦わなくてはならない時がある。
(引用古過ぎ)まあ、言ってみれば、まさにそんなかんじだったんです。男じゃないけど(笑) 「男」っていうのは 「人間」 とか 「山ヤ」 に置き換えてください。
北鎌には、自分の弱点を考えて、軽量化して入りました。
序章にも書きましたが、自分は重さに対して弱い。ザックの総重量はここまで、と決めたため、自分に必要な装備さえも持つことはできませんでした。
その結果、北鎌尾根を歩いていても常に緊張を強いられました。このまま登って行って降りられなくなったらどうしよう。引き返すにしてもクライムダウンに失敗して落ちたらどうしよう。ずっとずっとそんな恐怖心と戦いながら歩いていました。
北鎌から槍ヶ岳の山頂に立ったときは、「やった!」という達成感よりも、「もうこれで苦しまなくてすむんだ」 という解放感の方が強かったです。

何度も使っていますが、上の地図が今回歩いたところです。一番下の上高地から始まる、青い線と赤い線の反時計回りの一周コース。我ながらこんな長い距離をよく歩いたなーというかんじです。でも、天気がよければ2泊3日で行けるコース。1泊2日で行ける人もいます。停滞日があったり、天気待ちがあったりもしたけれど、4泊5日もかかってしまうなんて、やっぱ自分って未熟者なんだなーとつくづく思います。
さて。
最後に。
この記録を最後まで読んでくださった皆様。ここまでおつきあいくださって、ありがとうございました。書き始めたらだらだらと長くなってしまって、余計な部分もあったと思います。それなのにここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
そして、山行中に出会った皆様。皆様の激励&差し入れ&その他のおかげで焼岳までのロングルートを縦走することができました。本当にありがとうございました。いつかどこかの山でお会いしましょう。そのときは一杯おごらせてください。たぶんそのときは貧乏でなくなっていると思います…(笑

2009年9月10日~14日 単独行 槍ヶ岳北鎌尾根~焼岳
この山行の全記録
槍ヶ岳 北鎌尾根 ~ 焼岳縦走 下山直後のエントリ
槍ヶ岳 北鎌尾根~焼岳縦走 序章
槍ヶ岳 北鎌尾根~焼岳縦走 1日目(1) 上高地~水俣乗越
槍ヶ岳 北鎌尾根~焼岳縦走 1日目(2) 水俣乗越~P9手前
槍ヶ岳 北鎌尾根~焼岳縦走 2日目(1) P9手前~独標
槍ヶ岳 北鎌尾根~焼岳縦走 2日目(2) 独標~穂先
槍ヶ岳 北鎌尾根~焼岳縦走 2日目(3) 穂先~南岳小屋
槍ヶ岳 北鎌尾根~焼岳縦走 3日目 南岳小屋停滞
槍ヶ岳 北鎌尾根~焼岳縦走 4日目(1) 南岳小屋~北穂高小屋
槍ヶ岳 北鎌尾根~焼岳縦走 4日目(2) 北穂高小屋~穂高岳山荘
槍ヶ岳 北鎌尾根~焼岳縦走 5日目(1) 穂高岳山荘~西穂山荘
槍ヶ岳 北鎌尾根~焼岳縦走 5日目(2) 西穂山荘~焼岳~上高地
槍ヶ岳 北鎌尾根~焼岳縦走 最終章関連エントリ
槍ヶ岳 北鎌尾根 (2007年10月の記録)
チャレンジ!アルパインクライミング 北アルプス編
西穂~奥穂 1日目 アプローチ (2005年8月の記録)
西穂~奥穂 2日目 その(1) 西穂山荘→天狗のコル
西穂~奥穂 2日目 その(2) 天狗のコル→涸沢ヒュッテ
西穂~奥穂 3日目 下山
山飯: 上高地 ぐるめ情報 ~上高地コロッケ 関連サイト
南岳小屋
穂高岳山荘
小梨平キャンプ場
上高地公式Website
槍ヶ岳山荘
北穂高小屋
西穂山荘
焼岳小屋
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